特別養護老人ホームでの怪

私は某県内の特別養護老人ホームで介護士として働いています。特別養護老人ホームというのはご老人の終の棲家として認知症の方、体の自由が利かなくなった方が介助を受けながら暮らしていく施設です。

終の棲家というだけあって、亡くなる方も多くいます。そのような場所で私が経験したことをお話しします。

その日は日曜日。先日まで体調の悪かった方の様態が急変し、当日の夜に亡くなってしまいました。しかし、日曜日ということもありお医者様の死亡診断が翌日になってしまうということで、亡くなった方はお部屋に居てもらうことになりました。

私はその日の夜勤でした。しかし、亡くなった方のご家族様も別の棟に泊まっており、あまり怖い感じはしていませんでした。勤務自体は特に何か起こることもなく。私は「今日は静かで問題なく終わるな」と思っていました。

時間が2時を過ぎたころ突然ナースコールがなりました。お話しした通り、認知症や体の自由が利かない方が多いので、ナースコールが鳴ることは滅多にありませんでした。そんな中でのナースコールでしたので、私はびっくりしてどの部屋からのナースコールか確認しました。

するとナースコールは亡くなった方を安置している部屋から鳴っていました。私は、少し驚きましたが特に幽霊の存在を信じていなかったので、すぐにお部屋の確認に行きました。お部屋の中は外から中の様子が見えないようにカーテンで仕切られていました。お部屋の前まで行くと人感センサーでうっすらとお部屋の中に光が灯りました。

その瞬間、誰もいないはずのお部屋の中、つまりカーテンの奥で何かが動いているのが見えました。亡くなった方が安置されているであろうベッドの近くをゴソゴソと動いています。

私はとても驚き、数秒ほど動けなくなっていました。時間がとても長く感じてしまいました。その時、ピーピーと定時の巡視時間を知らせるアラームが鳴りました。私がハッとしてアラームの音を消し、お部屋を見ると

カーテンに人の形をした影が両手を上げてこちらを見ているように張り付いていました。私は「うわぁぁぁぁ…！！」と声を上げてステーションまで走っていました。

私はステーションから動くことができずに朝まで震えていました。

朝に他のスタッフが来てからこの話をしました。そのスタッフからは「あぁ、また出たの」と言われ、亡くなった方をお部屋に安置していると同じようなことが起こる。と話してくれました。