瞬間移動?
投稿者:Tひぐま (2)
別に怖くはない、でもあれはなんだったんだろうと今でも思い出すことがある子どもの頃の話。
2つあるので記憶が古い方から。
昭和生まれの私は四国の田舎で暮らしていた。まだ小学校に上がる前だったが、当時は子どもだけで遊んでいたし、父母におつかいもよく頼まれていた。
その日も家から歩いて数分の個人商店に買い物に行くよう母に頼まれた。確か内容は料理に使う調味料やちょっとしたものを2~3点。
合計金額は多分千円は行かないけど・・・と母は言いながら「念のため」と千円札を2枚、私に渡してくれた。それを握りしめて駆け足でお店に行った。目当ての物は全て揃い、特に自分の欲しいお菓子等を手に取ることもなくレジに向かった。合計金額は母の予想通り千円に満たなかった。折りたたんでいた2枚のお札を広げ、1枚を店主のおばさんに渡した。田舎のご近所のお店。もちろんおばさんも家族ぐるみで顔なじみである。お釣りを受け取って、レジ台の上に置いておいた残りの千円を手に取ろうとしたとき、問題が発生した。置いたはずの千円札がそこになかった。そしてなぜか一万円札があった。
「???」
幼い私は混乱して涙ながらにおばさんに事情を訴えた。持っていたはずの千円札がない、と。おばさんは
「こちらはその台の上に一万円札は置いていない。千円札を持ってきたというのは思い違いで、一万円札だったのではないか」
とパニックになる私に丁寧に説明してくれた。しかし私としては、持っていたのは絶対に千円札2枚だったのだ。母が財布から出して一緒に「千円が1枚、2枚ね」と確認したのを間違えたはずがない。
子どもというのは不思議なもので、そのときの私はおばさんが何と言おうとこの一万円札を持って帰ってしまっては母に叱られてしまう、と頑なに思っていた。私は「絶対に千円だった!」と主張しておばさんとしばらく問答をした結果「じゃあ・・」とおばさんが折れてレジから千円札を出して渡してくれた。おばさんの困りながらも嬉しそうな顔が印象に残っている。
私はなぜこんなことになったのか戸惑いながらもとにかく千円札を手に入れたことで安堵して家に帰った。
母には何事もなかったかのように何の説明もせず買った物とお釣り、そして千円札を返した。もちろん母は何の疑問もなくそれらを受け取った。
もう一つの話は私が中学生のとき。さっきよりもシンプルな話。
当時うちは家族で自営していて、自宅から離れた場所に事務所があった。親の仕事がある日は昼食に弁当を注文していたので、私も学校が半日のときや休みの日は一緒に事務所で弁当を食べることがあった。この話もそういう日に起こったこと。
その日は私と母の二人で事務所で昼食の弁当を食べることになった。いざ弁当を前にして、母が急須から湯飲みにお茶を注いでくれるのを見ていた。母と私と二人ぶん、2つの湯飲みにお茶を注いでいく。母が急須を机に置いて、私に渡すため一つの湯飲みに手を伸ばしたその瞬間
「あれ?」
と声にしたのは母だったが、私も同じ瞬間同じことを思った。2つの湯飲みにお茶を入れたりはずなのに、そこには湯気を立てたお茶が注がれた3つの湯飲みがあったのだ。
「今お茶2つ入れたはずなのに・・」
と母が言い
「うん、見てた・・・」
と私が返す。ちなみに湯飲みはいつも事務所で使っていた3つとも同じ種類の物。
でもまあ、お茶が1つ増えたところで別に困りもしないのでその後話題に出すこともなく普通に弁当を食べた。
どちらも勘違いの一言で説明がつく話。だけどその瞬間を体験した当事者としては、まるでその部分だけ世界がバグったような不思議な感覚だった。
どこかの平行世界で一万円札が千円札になっていたり、お茶が1つ消えていたりしたらおもしろい。
怖いか怖くないかと言われれば、怖くないとなるが、怖いか怖くないかおもしろいかと言われれば、おもしろいになるだろう。
怖くはなかったけど他に世界がある事を予感させられるような面白い作品でした
こういう不思議な話好きです。
平行世界がありそうで面白い。
三個湯飲み持つのは難しいよね!
お盆に置いて持ってきたのかな?
一万円は勘違いやろね。