明晰夢の顛末
投稿者:だれパンダ (31)
これは去年体験した出来事です。
当時私は事故で骨折し、1か月間入院を余儀なくされていました。入院中は読書意外にやることがなく、消灯時間が早いのも夜更かしの私には苦痛でした。
そんなある夏の夜、消灯時間が過ぎてもまだ眠れずに悶々としているうちに面白い事を閃きました。明晰夢にチャレンジしようと思い立ったのです。明晰夢とは夢と自覚をもって見る夢のことで、訓練次第で誰でもそれができるようになるのだそうです。
しばらく目を瞑っていると睡魔が襲い、意識が闇の底に落ちていきました。再び目を開くと夜の病室で、ベッドではもう一人の私が仰向けに寝ています。
明晰夢を見るのに成功した喜びも束の間、自分が分身した以外は何の変哲もない夢の情景に落胆しました。その後ドアをすり抜け廊下に歩み出すと、男の人とすれ違いました。
(見たことない人だな。知り合いじゃないよな?)
不思議に思って尾行していたらおもむろに彼が振り向き、悲痛な表情で一言呟きました。
「どうすれば戻れるか教えてくれ」
発言の真意を問いただす暇も与えられず、次の瞬間慌ただしい騒音が鼓膜を叩いて目を覚ましました。何があったのだろうと訝しんでドアを開け、危篤に陥った患者がストレッチャーで運ばれていく現場を目の当たりにし、それが明晰夢に出てきたあの男性だと理解しました。
私は明晰夢を見ていたのではありません。自分でも気付かないうちに幽体離脱をし、同じく肉体から抜け出た男性の魂と邂逅していたのです。
あれ以来、明晰夢を見ようと試すのはやめました。
怖い・・・