再利用された廃校

昔お世話になった会社の元上司のKさんが急に亡くなり、お通夜に行った時の話だ。

葬儀の日は仕事が休みだったのだが、葬儀は家族だけで済ませたいとのご遺族の希望だったから通夜に参列することにした。

その日の仕事を終わらせて一度自宅に帰り喪服に着替えると、早速車で出発した。

ただ、その時間では通夜の開始時間には間に合わないのはわかっていた。

Kさんの通夜は実家で行われると聞いていたが、その住所を調べると某峠を一つ越える。

その道のりを調べてみると、この峠は昔から大雨になると土砂災害が多く、防災工事が長引いているらしい。

それに加えて何か事故でも起きようものなら、かなり遅れる事を覚悟しないといけない。

当初の予定を大幅に過ぎ、峠にさしかかったのは夜中の12時ごろになった。

カーラジオの交通情報によると、どうやら峠で事故があったらしい。

「こんな時に限って…。」

私は独り言をつぶやいたが、こんな時は、急ぐあまり自分が事故を起こさなくて良かったと思うしかない。

ゆっくりと峠を進むと、事故処理をしている警察車両やレッカー車が見えた。

3台ほどある事故車を見るとかなりのダメージがあり、大きな事故だったみたいで交通規制されていた。

事故現場を通り過ぎる頃にはいつしか周りの車もいなくなり、峠には自分の車しか走っていなかった。

カーナビがあるとはいえ不慣れな暗い道をゆっくり進み、峠も走り終えようかとした時、何か大きな建物が目に入った。

滑り台やブランコがある広場もあったから、それは古い学校か何かのようだった。

ただ、おかしなことに、この深夜にもかかわらず、校舎の教室に明かりが灯っていた。

私は何となく気になり、車のスピードを落としてさらにゆっくりと走らせた。

校舎の一番手前にある一つの教室だけが明るく、その光はゆらゆらと不規則に揺れていて、中には数人の人影も見えた。

おまけに、校庭の奥の方にも10人程の人影があった。

ああ、そうか。最近は廃校になった校舎をリノベーションって言うのか、リフォームして地域の住民に開放したりするやつか。

もしくは、林間学校とか学習塾の夏期講習とか、どっかの企業が入ってたり、芸術家のアトリエとかになってるやつかな。

廃校になった校舎が様々に利用されているというニュースを思い出し、この学校は何に使われているのか色々と考えていた。

学習塾の合宿勉強なら有り得るか？いやいやこの時間にそれはないだろう。