夜に山から聞こえる赤ん坊の泣き声の正体は・・・
投稿者:Rebirth (2)
中学生のときにはじめ自分だけの部屋をもらいました。
母屋の隣に2階建ての家があり、学生に貸していたのですが、せっかく入居しても、すぐに出て行ってしまいます。
2年ほどで10人くらいが入れ替わりました。とくに、苦情もなく、そそくさと引っ越してしまいます。
それなら、私の部屋にしたいと、両親にお願いしてみたら、中学生になったのだし、いいだろうということになりました。
一階は、父が倉庫として使っています。2階は六畳のワンルームで、バス、トイレ付きです。
すっかり、一人前になった気分で食事の時間以外は部屋で過ごしていました。快適な暮らしです。
しかし、夜になるとこのあたりは静か過ぎて、不安な気分に襲われます。テレビなんかありません。せいぜいラジオを聞くくらいです。
静かすぎる夜、裏は山が迫っています。
暮らしはじめてすぐに、勉強机に向かっていると、背後に人の気配を感じるようになりました。
窓を開けて母屋を見ると電気がついているのが、見えます。
私は不安になると、家に戻り、二つ違いの弟とテレビを観ながら過ごします。
夜10時を過ぎると、家族も寝る時間なので、自分の部屋に戻ります。
自分から一人の部屋が欲しいとお願いしたからには、後に引けません。
なにごとも起こってないのに、怖いなんて言ったら弟に馬鹿にされます。
人の気配がしても、絶対に振り向かないことにして、怖さを我慢しながら、頑張りました。
早く眠くなるように、ベッドに入り、頭から布団をかぶって、丸くなって眠りました。
ある晩、トイレに行きたくなり、部屋の明かりをつけてトイレのドアを開けました。
トイレは山側にあり、風の音が聞こえます。
サワサワと竹林を風が通る音です。
なんでこんなに怖いのか、一人になって、自分が気が小さいのだと、はじめて知りました。
勉強どころではなく、早く眠りにつきたかった。
一カ月は辛抱できました。
慣れることはないけど、気配だけで、何事も起こらないのです。
少し慣れてきたのか、寝るまでの時間に机にも向かえるようになりました。
だけど、12時を過ぎると、山側から聞こえる風の音に混じって、赤ん坊の泣くような声が聞こえてくるようになりました。
それは、よく耳を澄まさないと聞こえない微かな泣き声です。
やがてか細い泣き声は消えてしまいますが、ほとんど毎晩のように聞こえるのです。
ある晩、人の気配が濃密になり、息遣いまで聞こえた気がして、思わず振り向いてしまいました。
女の人が背後にいました。
はっとして、立ち上がったときには、気配ごと消えていました。
今のは何? 気のせいか?
母屋の明かりはついているけど、暗い外に出るのが怖いのです。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。