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心霊

こうくんさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

お沙代ちゃんの祠
短編 2020/12/24 18:12 2,840view
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これは今から10年程前、私がまだ高校2年のときに体験した話です。

当時私はいわゆるゲーム実況動画にハマっており、なかでも特にホラーゲームの実況動画を見ることが好きで、翌日が休みの日には徹夜して見通したりするほどでした。

そんなある日、夏休みでろくに勉強もしていなかった私は暇を持て余しており、有名なホラーゲームの実況にも飽きてなにかもっとマイナーで面白いものはないかと探していました。そんな時に出会ったのが「古伝降霊術 百物語〜ほんとにあった怖い話〜」というセガサターンのソフトの実況動画でした。

ゲームの内容を簡単に説明すると、開始とともに100本のろうそくが立てられた画面が現れます。その内の1本を選択すると実話怪談がサウンドノベルとして流れ、1話終わるごとに1本、ろうそくが吹き消されるというものでした。(ちなみに稲川淳二監修というお墨付きで、実際何話かは稲川淳二氏本人の声で怪談が語られていました。)

そうなんです、このゲームは怪談の百物語をゲーム上で再現しようという今振り返るとなかなか危ないものでした。

百物語といえば、夜中に何人かでひとつの部屋に集まり、100本のろうそくを灯し、夜通し怪談を話していく。話が終わる毎にろうそくを消し、最後の怪談を話し終わった後なにか悪いことが起こるかもしれないという降霊術のひとつです。

しかしオカルト好きな私はこんなゲームがあったのかと興奮し、さっそくpart.1から実況動画を見始めました。実況動画といってもこのゲームの場合、サウンドノベルという朗読されるストーリーを聞くというものなので進行は一定で、実況者の若い男性も有名な方ではなく、合間合間で他愛もない雑談を挟むくらいで普通に怪談を朗読しているだけ、というようなものでした。

私は雰囲気を出そうとカーテンを閉め切り、クーラー全開でこの動画に挑みます。
パート2、パート3と見進めていき怪談の34話目「お沙代ちゃんの祠」という話を聞いているとき、昼下がり実家2階の自室のパソコンでゲーム実況を見ていた私は、1階のリビングにいる母親の悲鳴に驚きます。急いで駆けつけた私の目に飛び込んだのは、縁側につづくガラス窓の前で右足のふくらはぎを押さえて倒れている母の姿でした。よく見ると窓のガラスは割れて、母の足からは血が滴り落ちています。

「ガラス蹴った!?」
私の質問に、母は私の顔を見てただ頷きながら、猫が、猫が、と放心状態で繰り返すだけでした。
縁側を見ると当時放し飼いしていた飼い猫がこちらを不思議そうに覗いているだけでした。

後日、病院で手当を受けて事なきを得た母にその日の話を訊くと、私が自室でゲーム実況を見て34話目「お沙代ちゃんの祠」を聞いているあたりの時間に、飼い猫が外で喧嘩を始めたんだといいます。飼い猫はそれはものすごい声で鳴いていて、何事かとカーテンを開けると、磨りガラスの向こうに2匹の喧嘩する黒猫のシルエットが見えた、少し驚かしてよそへやろうとガラスを蹴ったところ派手に割れて病院に搬送される羽目になったんだといいます。

その話を聞いて、普段全然鳴かないおとなしい飼い猫が何かに感化されたのか大声で鳴きだしたということも不思議に思いましたが、なぜ2階にいた私には一切その鳴き声が聞こえなかったのか、また、母親が見たという喧嘩する2匹の黒猫のシルエットというのにも疑問が残りました。
なぜなら当時飼っていた猫の毛色は淡いクリーム色だったのです。

ちなみにこの「お沙代ちゃんの祠」という怪談のストーリーを簡単に説明すると、百物語によって呼び寄せた悪霊によって自身の娘・お沙代を死なせてしまった親が鎮魂のために祠を建てる、この話を聞いた者にはお沙代の霊が取り憑く、というものだったと記憶しています。

この一件以降、私はそのゲーム実況動画を見ることをやめました。百話に遠く及ばない段階で警告のようなことが起こってしまったので。もしあのまま見続けていたらどんなことが起こっていたのか興味は残りますが……。

そしてこれは後日知ったのですが、百物語やこっくりさんなどに代表される降霊術は、「途中で止めること」が最も危険らしいです。

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コメント(1)
  • その後は何も変わったことが起きてないと信じる。

    2022/07/26/00:23

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