昔殺した蛇の呪い
投稿者:峰 (38)
友人の祖父は、生前よく「俺は蛇に呪われているんだ」と言っていたそうだ。
というのも、彼は子どもの頃、蛇を捕まえてきては壁に思いっきり投げつけて殺したり、石で押しつぶして殺したりして遊ぶのがとても好きだったのだと言う。
いたずらに殺した蛇の数は両手両足を使っても数え切れないほどだった。
そんな彼は15歳になった夏、遊びに行った川で溺れて死にかけたそうだ。
突然足が攣って、水の中に引き込まれる感覚があったという。
友人数人が、本当にすぐ近くにいたのに、誰も気づいてくれなかった。
偶然、高台にいた大人が上から見ていて気づいたため、大慌てで助けに入ってくれたが、そうでなければ確実に死んでいたという。
さらに16歳のころ、家のすぐ裏手にある山が土砂崩れを起こし、生き埋めになってしまった。幸か不幸かその晩は家族が皆外出していたため他に被害はなく、また祖父も救助が間に合って一命を取り留めたそうだ。
18歳で大雨で畑が流され、20歳でまた川で流された。
「昔殺した蛇が俺を呪って、水害にばかり見舞われるんだ」と祖父は皆に語っていたそうだ。
それではなぜギリギリのところで助かっていたのか。
それは祖父の幼なじみで、やがて結婚した祖母に理由があるという。
祖母の家系は昔から蛇に“好かれる”のだという。
祖母の母が神棚を掃除していたら、白い蛇がちょこんと座っていた。大切に逃してやると、後日、祖母の家が持て余していた山がまるまる売れて、大きなお金が入ってきたという。
他にも、大雨の晩に家に小さな蛇が入ってきて、近所は浸水したのに祖母の家だけ被害が無かったとか、そんな話がたくさんある家だった。
その家の一人娘の祖母が、長いこと祖父と良い仲で、大人になってから結婚した。そのおかげで、祖父は命拾いをしたのだという。
「蛇も俺が憎かったと思うよ。だけど〇〇(祖母)の愛しい男だから殺せなかったんだろうなあ」と言って、酒の席のたびに祖父は大笑いしていたそうだ。
晩年、祖母に先立たれた祖父は、台風の夜屋根を直そうとして梯子から落ちて亡くなったという。
祖母がいなくなったあと、蛇の呪いがとうとう果たされたのか、真実は誰にも分からない。
おもしろい!