山の怖さを実感した剱岳の彷徨
投稿者:オリガミ (3)
山は怖いところである、其れを実感した剱岳の彷徨登山、
立山連峰を縦走して昨夜は剣沢小屋に一泊し、本日はいよいよ初めて岩の殿堂といわれる「剱岳」へ挑戦するのだ。 朝に出発時は雲は多かったが晴れ間も覗いていて、なんとか登山は可能であった。
剣沢からは愈、核心部の岩場に取り付く、四つん這いになりながら岩にへばりつき、はしごや鎖場を何度も乗り越えて、最後の鎖場、即ち、「カニのタテバイ」というところを超えれば、まもなく頂上はみえてくるはずである。
この頃から天候が次第に悪化し、風を伴う雨模様になってきた。 それでも難所を何度か繰り返しながら酔うようにしてやっと頂上へ達した。 其の頃になって風雨が更に強くなってきた。 山頂の祠に軽く参拝して、山頂の雰囲気を味わうこともなく、早々に下山することにした。
下山も、登り同様にしばらくはクサリ場やハシゴ、岩場を登ったり、降りたり、這いずったり、横切ったりと相変わらずの連続であり、下山とはいっても気楽な気持ちは微塵も無いのである。 相手は岩だらけの山なのである。
下山とは言いながらも、岩の上り下りが連続するので、実際の感覚は登っているのか、下っているのかがわからなくなってしまうほどなのだ。 経過時間を測っても、又、感覚的にもボチボチさっき通過した「前剣」のピークに達してもよさそうだが、と思いながら相変わらず岩場の格闘が続いていた。 そのうち大岩からやっと正面に塞がる岩壁を「ヒョイ」と超えたところで前が開けた。
そこで、よくよく視ると「これは又、どういうことなのか、 今さっきに越してきたばっかりの避難小屋(ブロックで積み上げた簡単な避難小屋;平蔵小屋ともいうらしい)が、再び眼の前に現れたのだ・・!!、 私は一瞬嘘だろう、幻覚かと目をこすりながら、できるだけ冷静に振り返りながら確認しようとしたが、それは間違いのない頂上の直下にある避難小屋であったのだ。
しかも、この避難小屋は上り時と下りの時、そして再び三度も視ることになってしまったのである。 つまるところ下っているはずのところを実際は再び登り返していたのである。 風雨が激しい中、夢中になって帰路下山を急いで来たのに、否、逆に夢中になっていたからこそ思い違いと感覚の不完全さが生じてしまった結果が招いたのかも知れない。 はた又、避難小屋という完全な目印がなかったら、そのまま気が付かないうちに上り返して剣本峰頂上へ向かっていたかも知れないのだ。
後で小屋の主人に経緯を話すと、「あそこの場所は、今までも何人も遭難が発生しているところですよ」という、併せて「このような悪天候では、あそこの場所は滑落事故が発生しやすいところで、何人も滑落で死んでますよ」と淡々と話すのである。 私はこの一言で再び、背筋が凍った。 山は怖いところである。
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