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心霊

川辺に咲くさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

チューハイおじさん
長編 2026/10/05 21:55 159view

家に着き、玄関のドアを閉めて、鍵をかける。
息を整えた私は、ようやく彼に尋ねました。
「……何なの?」
彼はすぐには答えませんでした。
言葉を選んでいるように見えました。
やがて、ぽつりと、
「……こっちを向いたんだ」
と言いました。
「え?」
「チューハイおじさん」
彼は顔を上げました。
「俺たちが近づいたら、ゆっくりこっちに振り返ってきた」

「へえ……珍しいね……」
彼は一度、唾を飲み込んでから続けました。
「最初は、スタジャンのバックプリントが見えて、ああ、チューハイおじさんだなって思った。人が近づいてきたのに気づいて、こっちを見たんだなって」
「でも……」
そこで言葉を止めました。
「なんか、おかしかった」
「何が?」
「身体は、全然動いてないんだよ」
彼は確かめるように、自分の首をゆっくり回しました。
「首だけが、ゆっくり動いて……」
そこで、また黙りました。
「最後には、完全に真後ろを向いた」

私は、その意味を理解するまで少し時間がかかりました。
「……真後ろ?」
「そう。身体は全然動かしてないのに、顔だけがまっすぐ俺たちのほうを向いてた」
私は黙り込んでしまいました。
「しかも……」
彼が続けました。
「笑ったんだ」
「……」
「目が合った瞬間に、口を大きく開けて」
彼は、少し震えるように息を吐きました。
「その瞬間、ヤバいって思って、戻ろうって言ったんだ」
その言葉を最後に、彼は黙ってしまいました。

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