「おに」
少し右前の方から、
「かめ」
小さな声が返ってきました。
声の方へ手を伸ばしながら進みます。
すると、
「フフッ」
笑いを堪えきれなかったような声と一緒に、慌てて畳を擦る音がしました。
僕も笑いながら、その音を追いました。
「おに、おに、おに」
「かめ、かめ、かめ」
「おに、おに」
「かめ、かめ」
「おに! おに! おに!」
「かめ! かめ! かめ!」
なかなか捕まりません。
声を頼りに追いかけても、手を伸ばした瞬間にはするりと逃げていきます。
思った以上にいとこが上手くて、僕もだんだん本気になっていました。
何度かやり取りを繰り返すうち、ついに追い詰めた感覚がありました。
壁の位置や自分の移動した距離から考えて、おそらく部屋の角です。
目の前、かなり近いところから声が聞こえます。
もう逃げ場はない。
そう思い、最後のつもりで言いました。
「おに、おに」
「……」
返事がありません。
僕は少し笑って、
「反則だぞ」
と言いました。
けれど、返事はない。
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