大学を卒業してすぐ、私は家賃が破格の安さの一人暮らし用アパートを見つけた。
築年数は経っていたが、内装はリフォームされたばかりで綺麗そのもの。私はすぐに契約を決めた。
入居して3日目の夜。
夜中の2時頃、ふと目が覚めた。
静まり返った部屋の中で、かすかに「カサカサ……カサカサ……」という音が聞こえる。
ネズミか虫でもいるのかと思い、電気をつけたが何もいない。しかし、目を閉じるとまた音がする。
耳を澄ますと、その音は私の耳元や天井からではなく、ベッドの下、それも床のフローリングを「内側から引っ掻く」ような音だった。
最初は気のせいだと言い聞かせた。しかし、音は毎晩続き、日に日に大きくなっていった。
「ガリガリ……ガリガリ……」
爪で木を激しく削るような、執拗な音。
限界を迎えた私は、管理会社に連絡した。
「床下で動物が死んでいるか、何かが閉じ込められているかもしれない。調べてほしい」と。
翌日、業者の男性がやってきた。
彼は怪訝な顔をしながら、キッチンの下にある床下収納のボックスを外し、懐中電灯を持って狭い床下へと潜っていった。
私はキッチンに立ち、彼が戻るのを待っていた。
床下から、業者の這いつくばって進む衣擦れの音が聞こえる。
「あー、これは……」
奥の方から業者の声が響いた。
「何かありましたか?」と私が問いかけても、返事はなかった。
ただ、ゴトゴトと、彼が慌てて戻ってくる音が聞こえた。
床下収納の穴から這い出てきた業者は、顔面が完全に蒼白だった。額からは異常な量の冷汗が流れている。
彼は工具を片付けるのも忘れ、私の肩をガタガタと震える手で掴んだ。
「お客さん、今すぐ、荷物をまとめてここを出てください。今すぐです」
訳が分からず、理由を問い詰める私に、彼は震える声で囁いた。
「床下、あんたのベッドの真下のところ……」
「基礎のコンクリートが、下から激しく削られてるんだ。それだけじゃない……」
業者は信じられないものを見た目で、私の背後を指差した。
「床裏に、びっしりと泥だらけの『人間の手形』がついてた。それも……床下から外へ向かって這ったんじゃない。
外の地面から、あんたの部屋の床の真裏に向かって、何かが這い上がってきて、そこでずっと床を叩いてるんだ」
その瞬間、ガリガリガリガリ!と、今度は真昼間にもかかわらず、キッチンの足元から激しい音が響き渡った。

























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