ほんの一瞬。本当に一瞬だけ、昔と同じ笑顔だった。
その笑顔を見た父も、小さく笑った。
安心したような。長い悪夢から目覚めたような。
そんな、穏やかな笑顔だった。
私は、その表情を見て、ここ数ヶ月の出来事が脳裏を過ぎった。
『あいつさえいなければ』
『〇〇を返せ』
占い師の『前世では、あなたの旦那さんです』という言葉。
あの言葉を聞かなければ、父は弟にあんな感情を抱かなかったのだろうか。
それとも、あの言葉は父の中にあったものを引き出しただけだったのだろうか。
今でも私には分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
弟が死んでから、父は二度と弟に嫉妬することはなくなった。
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