「こんなんじゃ夜景なんて見えないな」
俺が笑いながら話しかけても――
返事がない。
助手席を見る。
A子は、真っ直ぐ前だけを見つめていた。
表情が固い。
「どうした?」
返事はない。
「A子?」
それでも返事がない。
ただ、カーステからドリカムの歌だけが静かに流れていた。
――そして俺は、あることに気づいた。
A子は、前を見ているようでいて、
何かを見ていた。
十分。
二十分。
三十分。
四十分。
おかしい。
駐車場には、とっくに着いているはずだった。
霧のせいで道を見失ったのか。
そう思いながら、もう一度A子を見る。
その顔は、青ざめていた。
唇から血の気が完全に消えている。
そして――
瞳だけが、何かを追い続けていた。
「一回Uターンしよう」
俺がそう言った瞬間だった。
道路の左側に、細い脇道が現れた。
「ここで回ろう」
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