風の音。
服が擦れる音。
荒い息遣い。
誰かがスマホをポケットに入れたまま走っているようだった。
間違い電話か。
そう思って切ろうとした、その瞬間。
「待て!」
男の怒鳴り声が響いた。
「逃げたぞ!」
「そっちだ!」
複数の足音。
枝が折れる音。
枯れ葉を踏みしめる音。
誰かが必死に逃げている。
息遣いの主は若い女性だった。
「はぁ……はぁ……」
泣きながら走っている。
後ろから男たちの足音が迫る。
「見失うな!」
「急げ!」
女性は転んだらしい。
何かが倒れる音がした。
俺は思わず立ち上がる。
「もしもし!」
「聞こえますか!」
もちろん返事はない。
俺の声は届かない。
電話の向こうの時間だけが流れていく。
しばらくして電子音が聞こえた。
ピッ。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 0票

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。