大学受験を控えた受験生の話です。
休日でも関係なく、机を向いてシャーペンを持ち、参考書をにらみつづけていました。
「周りはもっと頑張っている」「落ちるわけにはいかない」「応援してくれている人がいる」
そんな焦りもあって、私は必死に目の前の問題を解いていました。
土曜日の朝から勉強に明け暮れていた私は昼休憩を取りました。
その日は家族が気を利かしてくれ、弟を連れて3人で旅行に行っていました。
そのため家には私一人で昼ご飯も簡単に自分で準備しました。
昼休憩が終わった後、集中して問題を解いていると気づいた時には夕方になっていました。
日が落ち始め、外の色が赤色に染まっていたころ、私はふとあることに気づきました。
外が不自然なほど静かなのです。
いつもはカラスやほかの鳥の鳴き声、子供たちのはしゃぐ声などほのぼのとした音が耳に入ってくるのに、その日は世界に私しかいないかのように静まり返っていました。
少し恐怖を感じましたがそんな日もあるのだろうと思い、再び勉強に集中しました。
しばらくして、ふと違和感を覚えました。
間違いなく数時間経過したという実感があるのにもかかわらず、景色が夕方なままなのです。
時計を見るとまだ夕方です。
「おかしい」
直感的にそう感じましたが、家には誰もいないという孤独感が恐怖をより掻き立て、部屋で小さくなっているしかできませんでした。
すると急に音楽が流れてきました。
私の町では夕方のある時間になると子どもの童謡が流れるのですが、その時に流れたものは違いました。
いつもの曲のはずなのに、音がどこかずれていました。途中から音が重なり始め、同じメロディーが少しずつ遅れながら何重にも折り重なっていくような、気持ちの悪い響きでした。
そしていつの間にか子供の笑い声が聞こえていました。
遠くから。窓の外から。玄関から。部屋の扉の奥から。
そして、真後ろから、たくさんの小さな手が私の背中を触れました。
その瞬間、意識が飛びました。
目が覚めた時、外はまだ真っ赤でしたが、時計の針は、意識を失う直前と全く同じ時刻を指していました。
でも鳥の鳴き声は聞こえます。子供たちの遊び声が聞こえます。
そして家族のただいまという声が聞こえました。
安堵して、私はすぐに階段を下りて玄関に向かいました。
そこに家族はいませんでした。
ただ家族の話す声は聞こえます。

























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