「やっぱり! 久しぶり、卒業して以来じゃん!」
男の方が、懐かしい笑顔で俺の肩を叩いた。だが、その手からは冷たい水が滴り、俺のスーツを濡らした。二人は傘も持たず、滝のような雨に打たれながら平然と立っていた。
「あ、ああ、久しぶり……」
俺は引きつった笑みを浮かべるのが精一杯だった。
「今から仕事? スーツ着てカッコいいじゃん」
彼の口には猛烈な雨がなだれ込んでいて、声は溺れたようにゴボゴボと聞き取りづらかった。
「いや、俺は……その、ちょっと求職中で。これから会社説明会があってさ」
言い訳じみたセリフが口をついて出る。
「そっか! 大変だろうけど、良いところ見つかるといいな!」
彼は屈託のない笑顔で励ましてくれた。その横で、彼女の方が微笑みながら「そうだ」と、自分の左手を差し出してきた。
「私たち、結婚したんだ」
差し出された二人の薬指には、お揃いのシンプルな指輪が鈍く光っていた。
幸せの絶頂にいるはずの彼女の顔を見て、俺の心臓がドクンと跳ねた。
激しい雨で化粧は崩れ、黒いマスカラが頬を流れ落ちていた。目元はぐしゃぐしゃなのに、笑顔だけは崩れない。そのアンバランスさが、ひどく気味悪かった。
それなのに、二人は少しも気にしていない。ただ無邪気に笑っていた。
「お、おめでとう……」
声を絞り出した瞬間、目眩がした。
俺は周囲を見渡した。
誰もがずぶ濡れだった。
誰もが前へ進んでいた。
俺だけだった。傘を差しているのは。
「……じゃあ、俺、説明会あるから行くわ」
「おう、頑張れよ!」
二人の笑顔に背を向け、俺は再び歩き出した。
雨粒が傘を叩く音だけが、やけに大きく響く。
交差点を渡りきる手前で、俺は立ち止まった。
柄を握る手に力を込める。























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