俺は新卒で入った会社でパワハラを受け、適応障害になった。
1年で会社を辞めて以降、世間から逃げるように、ずるずるとニートを続けていた。
28歳になり、「このままでは本当に取り返しのつかないことになる」という焦りから、俺は一念発起して就職活動を始めた。
その日は、午後から渋谷で会社説明会があった。
昼夜逆転した眠い目をこすりながら、最寄りの駅へと向かう。外は雨が降っていた。前日の天気予報では晴れだと言っていたのに、当てにならないものだ。
5年ぶりにクローゼットから引っ張り出したスーツと革靴に、容赦なく雨の飛沫がかかるのが不快で仕方がなかった。
駅に着くと、雨に降られている人をちらほら見かけた。
「天気予報に騙されたんだろうな。かわいそうに……」
傘を差している自分に優越感を覚えながら、俺は心の中で彼らを憐れんだ。
改札を通り、都心へと向かう快速電車に乗り込む。
電車に揺られている間にも、雨はどんどん激しさを増していった。都心に近づくにつれて乗客が増え、雨に濡れた彼らが放つ生温かい熱気で、窓ガラスがみるみる曇っていく。
俺は、他の乗客の肩から滴る水滴が自分のスーツに付かないよう、小さく肩をすくめた。駅に着くのを、今か今かと身を硬くして堪えていた。
ようやく渋谷駅に到着した。
慣れない構内に迷いながらも改札を通り、外へ出る。雨はさらに強くなっていた。
「これでは説明会に着くまでに靴下まで染みてしまうな……」と、半ば諦めた面持ちで傘を広げ、歩き出した。
そこで、俺は強烈な違和感に足を止めた。
大雨だ。完全に土砂降りと言っていい。
なのに、誰も傘を差していない。
カラフルな私服に身を包んだ若者も、お年寄りも、ピシッとしたスーツを着たビジネスマンも、全員がずぶ濡れになった状態で平然と歩いている。
ハチ公の前には、水滴をボタボタと滴らせながら、微動だにせず誰かを待っている人までいる。
誰もが、自分が濡れていることを全く気にしていない様子だった。
……いや、そんなことに気を取られている場合じゃない。
何かの見間違いだと自分に言い聞かせ、俺は会社説明会の会場へと急いだ。
大雨によって霧がかったように視界の悪い中、ただ前だけを見る。俺の持つ傘に当たる、雨粒のバチバチという大きな音だけが、耳障りに響いていた。
会場へ向かう途中、スクランブル交差点へと差し掛かった。
信号待ちをする何百という人たちが、全員傘を差さず、ずぶ濡れのまま思い思いに佇んでいる。あまりにも異常な光景だった。
やがて信号が青になり、四方八方から人の往来が入り乱れる。激しい雨の中、俺だけがポツンと傘を差し、人混みを避けるようにして肩身を狭くしながら交差点を渡った。
ようやく交差点の中央に差し掛かった時、後ろから声をかけられた。
「……あれ、もしかして、〇〇?」
振り返ると、そこにいたのは大学の同級生二人だった。在学中から付き合っていたカップルだ。

























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