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ヒトコワ

霞町路(筋首)さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

廃墟の式場で待つもの
短編 2026/06/10 17:55 81view

「社長も惚れ直すと思いますわ」
「愚問よ。惚れ直すも何も、最初から夢中よ」

メイク担当が出ていき、私は一人で控え室に残った。
静寂が心地いい。
世界が私のために息を潜めているみたい。

幼い頃から、私はいつも“あと一歩で一番”だった。
バレエもアイドルも会社勤めもキャバクラも。
だから社長と出会った瞬間に悟ったの。これは運命だって。

ライバルは蹴り落とした。
誹謗中傷も、陰湿なイタズラもした。

社長のために情報を盗んだこともある。

社長はいつも言ってくれた。

「ありがとう。僕のためにここまでしてくれる人はいなかった」

そのあとに見せる、あの陰りの表情。
あれはきっと、私への深い愛ゆえの不安。
可愛い人。
私がいなきゃダメなのよね。

ねぇ社長、新婚旅行はどこがいい?
ニューヨークでもハワイでもいいわ。
子供は何人にする? 私たちに似て完璧な子になるわね。

全部うまくいくに決まってる。だって私たちだもの。

「お待たせしました。案内します」

案内役は会社の者だった。
まあ、私の晴れ舞台だもの。
社員総出で支えるのは当然。

「式場はこちらでございます」

扉の向こうには1000人のゲスト。
ライバルたちもいる。
羨望、嫉妬、憧れ、悔し涙。
全部まとめて飲み干してあげる。

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