「社長も惚れ直すと思いますわ」
「愚問よ。惚れ直すも何も、最初から夢中よ」
メイク担当が出ていき、私は一人で控え室に残った。
静寂が心地いい。
世界が私のために息を潜めているみたい。
幼い頃から、私はいつも“あと一歩で一番”だった。
バレエもアイドルも会社勤めもキャバクラも。
だから社長と出会った瞬間に悟ったの。これは運命だって。
ライバルは蹴り落とした。
誹謗中傷も、陰湿なイタズラもした。
社長のために情報を盗んだこともある。
社長はいつも言ってくれた。
「ありがとう。僕のためにここまでしてくれる人はいなかった」
そのあとに見せる、あの陰りの表情。
あれはきっと、私への深い愛ゆえの不安。
可愛い人。
私がいなきゃダメなのよね。
ねぇ社長、新婚旅行はどこがいい?
ニューヨークでもハワイでもいいわ。
子供は何人にする? 私たちに似て完璧な子になるわね。
全部うまくいくに決まってる。だって私たちだもの。
「お待たせしました。案内します」
案内役は会社の者だった。
まあ、私の晴れ舞台だもの。
社員総出で支えるのは当然。
「式場はこちらでございます」
扉の向こうには1000人のゲスト。
ライバルたちもいる。
羨望、嫉妬、憧れ、悔し涙。
全部まとめて飲み干してあげる。
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