「おつたい様をよろしくお願いします」
この家特有のの挨拶か何かだろうかと、その時俺は思ってたんだよ。
それからしばらくして、ギャンブルの負けが続いたんで、
兄貴にちょっとお金を借りよう、と連絡したら、喫茶店に呼ばれた。
数万円をもらって、とある相談をされたんだ。
奥さんが妊娠したらしい、おそらく、あの初夜の時だそうだ。
おめでとう、というと、兄貴は少し悩んだ顔をして語り始めた。
妻の実家は「おつたいさま」という土着の神さまを代々信仰していて、あの結婚式の水あわせの儀式はその一族に取り込む儀式も兼ねているようだと。
唐突な話に、俺は変な壺でも買わされたのか、と茶化すと、兄貴は首を振った。
「あんな田舎暮らしなのに、全員やけに裕福だっただろ。あの辺の大地主の家系ってだけじゃ説明がつかないくらい。
それをあの人たちは、おつたいさまの恩恵だと信じている、嫁さんもな。」
「生まれてくるのは、おつたいさまの祝福を受けた子、だってさ」
何とも言えず、黙っていると「おまえも、もうその一族って扱いなんだぜ」
と言われた。実感は全く湧かないが、気味が悪かった。
兄貴は話を続ける。
「おつたいさま、ていうのは水の神様らしい、あの地域の治水を司ってて、
昔から信仰されてたんだそうだ。
・・・俺なりに調べてみたんだが、戦後、このあたりでも狂犬病対策の一環で、山や林に生息していた野良犬たちが執拗に殺処分された。
それをこの辺が田舎だからって、他の場所からも大量に動物の死体を処分したらしい、
よりにもよって、おつたいさまの祠の近くでな。
当時、行政と地域住民と相当揉めたようだ。」
「それが理由だったのか、当時の景気の状況でそうなったのかは、今ではもうわからないが、
あっという間に、この町は過疎化したそうだ。
そこで、周辺の土地を安く買いあげ、あの集落を立て直したのが、
元々この辺の地主だったお義父さんの一族達だった。」
「住民以外の、おつたいさまを祀っていた祠周辺の出入りを禁止したんだ。
元々過疎化していた町だから、特に問題は起きなかったようだが・・・
しばらくしたら、急に株やら土地開発やらで、成功し始めてな。今じゃ、知る人は知る大金持ちの一族らしい。それでも、都会に引っ越すことなく
この辺を治めてきたから、この辺の住民の忠誠心も高い。
























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