A君が住んでいた港町には「死体浜」と呼ばれている砂浜があった。
春先になると決まって、魚、クラゲ、カメ、海鳥なんかが大量に打ちあがって干涸らびているのだ。
それらはある日突然浜辺に打ちあがり、すでにどれも死んでいる。
生きている間に群れで押し寄せたわけではなく、海のどこかで死んでから、なぜかこの浜に集まってくる。
海流の都合だとしても死体だけが集まるのはおかしい。
近くの大学の研究室が一時期調べていたが、結局原因は分からなかったらしい。
死体だけが集まる浜とくれば、さまざまな噂が囁かれる。
”江戸時代に起きた心中の年から海に死体が寄ってくるようになった”
”実は人間の死体も毎年揚がっているが、町ぐるみで隠蔽している”
”潮干狩りが禁止されているのは、浜を掘ると死体が大量に出てきてしまうから”
”深海の巨大な生き物が、親猫のように人間にエサを分けてくれている”
そんな噂の数々を、A君は友人のB君からいつも聞かされていた。
B君は浜の噂や歴史をいつも図書館で調べていて、とても詳しかった。
学校でいじめを受けていたB君にとって、町の小さな図書館がもっとも穏やかに過ごせる空間だったのだ。
いじめを止められないことをA君はいつも申し訳なく思っていたが、B君はA君を責めたりせず、いつも一緒に図書館で遊んでいた。
だが、図書館で過ごしていたことがいじめグループにバレてしまい、B君は図書館にも来られなくなってしまった。
学校に来なくなってしまったB君をA君は心配した。
やがてLINEの返信もなくなってしまい、連絡が取れないまま夏を迎え、秋が過ぎた。
B君の死体が浜辺に打ち上がったのはその年の冬のこと。
遺書が見つかり、状況的にも自殺で間違いないということだった。
そこから、A君の祖父を始めとした町のお年寄りたちは毎日慌ただしく寄合所で会合をするようになった。
A君が祖父に訊ねても、「……もう浜ぁ寄るな」と言うばかりで、何も教えてくれなかった。
翌年の春、例年どおり浜辺には死体がたくさん揚がった。
様々な生き物の死骸に混じり、B君の死体も40体ほど揚がったそうだ。



























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