奇々怪々 お知らせ

妖怪・風習・伝奇

卯鷺さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

絆という呪い
長編 2026/04/14 09:44 629view

だからこそ、一人で逝きたくない。
一人で逝くのは寂しい、辛い。
だから共に来てくれる人を求める。
誰かが亡くなると、誰かが連れていかれる事が起こるのだと。

思い返してみると、父がどこかの葬儀に出かけたと思うと、立て続けに葬儀に参加していて、「葬儀貧乏になる。」とよくぼやいていた。
そんなのただの偶然だと思われるかもしれないが、偶然にしてはあまりにも続きすぎるとは思う。
そのくらいの頻度なので、高校生にもなった私や友人たちも、この迷信だけは真に受けていた。

これが連れていかれるの真相だ。
だが、誰かが亡くなったなんて最近は聞いていない。
母は話を続けた。

「あそこの橋でさ、昨日ね、谷底の方に下りていく人を見たって人がいるのよ。」
血の気が引くというのをこの時、初めて実感した。
こういった目撃談は度々聞くのだが、まさか自分が事故を起こす前の日に起こっていたとは。
あの迷信の裏付けができてしまった。

改めて事故の瞬間を思い出し、あの老夫婦のように大けがをしていたかもしれない。
もしかしたら、ガードレールと橋の隙間から谷底に転落して、最悪の結果になっていたかもしれない。
家に帰ってきて安心しきっていたところから、不安が一気に丸のみにしてきた。
しかし、自分の身内や近しい関係の人間ならまだしも、誰かもわからない存在に勝手に連れていかれるなんて、もはやある種の呪いのようにも感じてしまう。
そう考えると、あの老夫婦や、事故を起こしながらもそのまま走り去ったあの運転手も巻き込まれたのかもしれない。
すっかり不安に押しつぶされてしまい、晩酌どころではない。

その日は食事も摂らずに布団に入ってしまった。
翌日はとても仕事に行ける精神状態ではなく、急遽、休みにしてもらった。

ここからは後日談だ。
事故から二日後、仕事から帰ると、母からその後の続報が入った。
私が事故にあった翌日、橋の下を流れる川の下流で、女性の遺体が見つかったそうだ。
身元の詳細はわからない。ちなみに地元の人があそこで身を投げたという話は聞いたことがない。おそらくはどこかからそういった場所を求めてやってきたのだろう。
老夫婦の詳細も不明だ。無事であることを願う。

それとこの出来事から数年後、父が亡くなった。
その近い時期に、父のいとこと、私の後輩が亡くなった。
2人とも仕事中の事故で、普通であれば絶対にしないようなことをして事故にあったそうだ。
ただの偶然。この一言で片づけられそうな話ではあるが、身近に聞いてきた私としては、未だにどこか真に受けているところがある。
コミュ障気味な私的には、出来れば一人静かに逝きたいと願うばかりだ。

5/6
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。