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妖怪・風習・伝奇

卯鷺さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

絆という呪い
長編 2026/04/14 09:44 465view

私は橋の上で項垂れていた。
2月の夜、鉄の欄干はひどく冷たくて、手のひらが痛いくらいだ。
とは言っても、ここから飛び降りようとか、物騒なことは考えちゃいない。
後ろに止まる車のハザードランプの光を眺めながら、私はさっきまでの出来事を思い返していた。

今から一時間ほど前。
社会人3年目だった私は、その日、急遽頼まれた資料の作成で残業をしていた。
突然の依頼で下調べも碌にしていなかったので時間がかかってしまい、終わったころには20時を過ぎていた。

依頼してきた上司の机に出来上がった資料をおいて事務所のドアを開けると、ちらちらと雪が降っていた。みぞれ混じりの雪だ。
こんな遅くまで頑張ったのにツイてない。
そうボヤキながら、車のエンジンをかけた。
というのも、平坦な道であれば雪の降り始めなんて大したことはない。
しかし、私が通勤に使っていたルートにはちょっとした峠が三か所もある。こんな道でも一応は国道だ。

田舎の道路事情は厄介なもので、下手に迂回しようものならずっと山の方まで連れていかれて、倍以上の時間がかかってしまう。
雪が降るのは季節柄、当然のことではあったが、冬の通勤だけは本当に憂鬱だった。
私は車にエンジンをかけ、車が温まるまでの時間、タバコを吹かして過ごした。

市内のいつも使っているコンビニで晩酌のお酒を買い込み、帰路に就く。
市内を抜け、長いつづら折りの坂を上っていく。
長い上りが終わるころ、段々と雪が止んできた。
「うわぁ、最悪だ。」
思わず声が漏れる。
雪が降る地方の方には共感してもらえると思うのだが、雪が降っているうちは意外と道路は凍らないもので、案外平気なのだ。
面倒なのは雪が止んだ後。溶けた雪が道路の表面で氷に変わる。
私は早く帰りたい気持ちを抑えて、ゆっくりと走行を続けた。

上り坂を上りきってしばらく走っていくと、今度は下り坂に差し掛かる。緩い左カーブが続く長い下り坂だ。

用心しながら、制限速度以下で下っていく。
坂の中ほどまで下って行った時、急に車がフッと軽くなった感じがした。
初めての感覚に違和感を覚え、私は試しに軽くハンドルを切ってみた。
バカなことをしたと後悔している。
ハンドルを切った瞬間、後輪が外側へと流されていった。
あの軽く感じた時に、車はスリップをしていたのだ。
何とか立て直そうと、反対方向にハンドルを切る。
しかし、今度は反対方向へと車体は流される。
「このままいったらまずい!」
この坂を下りきった先は、高さ数十メートルはある橋になっている。
おまけに、橋の手前はなぜかガードレールが途切れていて、そこに突っ込む事になれば谷底へ真っ逆さまだ。
ただ事では済まないことを予感した私は、制御不能になった車の中で、何とか立て直そうと必死でハンドルを切り続けた。
視界が左右に振り回され、どのくらい下ったかも見当が付かない。
そして次の瞬間、目の前に橋の欄干が見えたと同時にものすごい衝撃が全身に走った。

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