その時、外から「艦載機が墜ちたぞ!」という声が響いてきました。
急いで窓を開け放つと、遠くの田んぼで白い煙が上がっているのが見えました。
「バンザイ――!」
誰かが快哉を叫ぶと、それは教室中に広がっていきました。
いま思えば、エンジントラブルかなにかだったのでしょう。
だけれど、その時の私たちは祈りが天に通じたのだと思い込んでいたのです。
歓喜に沸く教室で、佐藤さんだけが窓の外――プールのほうを茫然と見つめていました。
そしてぽつりと、
「お兄ちゃん……」
と呟いたのが聞こえました。
それから、だんだん奇妙なことになっていったんです。
クラスで降霊術のようなことが流行りだしました。
外国から取り寄せた降霊術の本をみんなで回し読みしたり、独自の儀式を行うようになっていったんです。
私たちの『霊的国防』によってお国を守るのだと。
読んだ本のなかに、鏡を利用した思念の実体化というのがあったんです。
曰く、実体化した思念を使役して身代わりにしたり、敵対者を攻撃するというものでした。
みんなでこの儀式を行って無敵の神兵を作ろうという話になったんです。
でもクラス全員を映すほどの大きな鏡なんてありません。
そこで、誰かがプールの水面を鏡に見立てる方法を提唱したんです。
放課後、みんなでプールサイドに立って手を繋ぎ、念を送り続けました。
「憎き者、すべてこの水底に引きずりこまれよ……」ってね。
そんなことをしているうちに終戦となりました。
すると、みんな夢から醒めたように興味を失っていったんです。
儀式は新月の日から満月の日まで毎日行わなければならない規定でしたが、中途半端に終わってしまいました。
私たちは戦争の狂気に踊らされていただけ……すべて偶然で、あんなものは何の効果もなかった。
誰も言いませんでしたが、それがみんなの一致した意見だったんじゃないかしら……
だから、その後に起こったことも単なる偶然だと思うんです。
聞いたお話とは無関係。
ごめんなさいね、おかしなことを言って……」


























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