飲み会の二次会、店の奥の座敷で四宮がぽつりと「霊が視えるんだよ」と言い出した。
学生の頃は休み時間でもノートをいじって一人でいた彼が、今はビール片手に楽しそうに話している。
「亡くなった教頭いたでしょ。四万十川先生。怒ってばかりだったけど死んでからは穏やかだよ。今も学校の廊下の隅で見守ってくれてる」
嘘か本当か分からないけれど、妙に趣きがあって、みんな笑いながら聞いていた。
「島津さんはね、悲しんでくれたことに感謝してたよ。もっと生きればよかったって悔いてたけど、今は落ち着いてる。病に罹った塩田くんも、必死で生きたことを誇りにしてた」
「それ聞いて安心したわ」
「死人多すぎー」
亡くなったクラスメイトの話題で不謹慎だと思いつつ、酒の勢いもあって場は盛り上がった。
死後の話がこんなに明るいなんて、少し救われる気さえした。
「そうだ。諸徳寺いたじゃん。いつもハイテンションでさ。事故死って聞いた時はショックだったよな」
その名前が出た瞬間、四宮の笑顔が止まった。
箸を置く音だけがやけに響いた。
「……諸徳寺くんのことは、やめといたほうがいい」
「えー、なんでよ。アイツなら死んでも笑ってそうじゃん」
「気になるって」
みんな軽いノリで言うが、四宮だけは沈黙したままだった。やがて誰かが「墓、近いし行ってみようよ」と言い出すと、全員が賛同した。
四宮だけが、明らかに気乗りしていなかった。
夜道を歩きながら、四宮はずっと黙っていた。
僕が「やっぱりマズい?」と聞くと、彼は小さく首を振った。
「……気を遣わせてごめん」
墓地に着くと、四宮は立ち止まった。
「やっぱりダメだ。引き返そう」
「なんでー」
「そんなにマズいの?」
「ちょっと謝りたいだけなんだけど」
ひとりが言った。「俺、昔アイツを茶化しすぎてさ。悪かったと思ってる。謝りたいんだよ」
四宮はしばらく黙り、言いにくそうに口を開いた。
「……入らないほうがいい。身のためだよ」
そして、僕らを順番に指さしながら言った。
「君もダメ。……君も。……君もだね。やっぱり、僕しか近づけない」
全員、何かしら心当たりがあるようで、誰も反論できなかった。

























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