途中、興奮したのか息を整えながら悠介は続ける。
「そしたら、俺も気絶していました。でもその時、確かに見たんです。男の霊が、俺達を指差して笑ってるのを。本当ですよ、工場の側に立っていましたから。友達も霊を見た、と言いながら気を失いました。絶対です。だから、あれは多分霊の祟りなんじゃないかって、思うんです。」
そう言うと、悠介は大きく咳き込んだ。
「それは怖い思いをしたね。教えてほしんだが、その霊を見る前に、何か思い当たる事はなかったかい?何でもいいんだ、寒かったとか暑かったとか、何か聞こえた、とか。」
少し俯き考え込んだ悠介は、ハッとして顔を上げる。
「匂いです。そういえば、直前にお線香みたいな、ツンとした匂いがしました。ーーーでも、それくらいですね。」
そう言うと、再び悠介は俯いた。
「ちなみに、それはどんな幽霊だったか覚えているかい?」
「いえ、男の霊だとは直感でわかったんですけど、どんなかと言われても覚えていません。ただ、怖かったです。」
「そうか。あと、当日の君達の行動を教えてもらえるかい。些細な事、細かな事でもなんでもいいんだ。」
そこから数十分間、2人は話し込んでいた。
松岡が時折メモを細かく取る。
「ーーーなるほどね、よく分かった。話してくれてありがとう、参考にさせてもらうよ。今はゆっくり休んで。具合の悪い所申し訳なかったね。」
松岡は頭を軽く下げると、病室を後にした。
小さな決意を、胸を秘めながら。
「聴取しても、ああいう感じなんですわ。要領を得なくてねぇ。」
宮崎に対し、松岡は踵を返し答えた。
「彼は少なくとも嘘は言っていませんよ。恐らく、としか言えませんが、話してくれた事は事実でしょう。目と雰囲気を見れば分かる。」
「ちょっと、待ってくださいよ。あんた、彼の言っていた事を真に受けるんですか?ーーー霊の仕業とでも?」
「宮崎さん、我々の持っている過去の経験則なんてたかが知れていますよ。この事件を解明できるのなら、藁にもすがります。」
そう言い放つ松岡を、宮崎はただ呆然と眺めていた。
そして、日付の変わったAM2:00頃、松岡は現場へ1人到着していた。
松岡は捜査に行き詰まると、事件現場で被害者と同じ時刻、同じ場所で同じ行動をする癖がある。
そうする事で、解決の糸口が見つかった事が何度もあったのだ。
そう、8月21日の宮田悠介と同じ行動を取るつもりなのである。
何も手掛かりがない中、現在のところこれだけが頼りなのだ。
木々と茂みの中を抜けていくと、眼前にあの廃工場が現れる。
闇の中、うっすら月明かりに照らされる様子は薄気味悪い、という表現がぴったりだった。
ーーーここで、何が起きたのだろうか。


























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