程なくすると、木々の中からボロボロの建物が目の前に現れた。
工場だろうか、廃墟マニアが喜びそうな雰囲気である。
「やっと着いた、ここだな。ネットによるとこの辺りに出るらしいぞ、自殺した霊がな。」
そう言いながら圭太はスニーカーについた泥を落とす為、木を蹴りながら擦り当てる。
「それって、尾久根事件の関係者って事?」
結衣が首をすくめながら確認すると、圭太は頷き言葉を続ける。
「この工場で、社長含めた何人もの従業員が集団自殺したらしい。噂によると、躍起になった社長が次々と殺した、って話もあるけどな。まぁ、どっちにしてもさ、そりゃそうだよな、あんな事件があったんだから」
圭太は思わず生唾を飲んだ。
尾久根事件は当時、テレビや新聞でも大々的に報道されていた。
ここは心霊スポットとして相当に危ない場所というのはわかっていたが、この場でその話を改めて確認すると、今更であるが背筋が寒くなる。
その束の間、圭太はひとつの異変を感じ取った。
何か臭い匂いが漂っている。
線香に似ているけれど、どこか、そんな匂いが鼻をかすめる。
とにかくさーーー、と圭太は廃工場を指差す。
「中に入ってみようぜ。さぁほら」
それに促され結衣が後に続き、廃工場へ向かって歩き出した。
ーーーあの中に入るなんて、正気の沙汰じゃない。
とてもじゃないが、俺には無理そうだ。
圭太と結衣には悪いけれど、待たせてもらおうーーー
悠介がそう決心した矢先だった。
突如、圭太が崩れるように地に倒れこんだ。
口から泡を吹き、激しく痙攣し始める。
結衣の叫び声が響き渡った。
悠介は一瞬呆気に取られたが、すぐさま圭太の元へ向かう。
「圭太!どうした、大丈夫か!」
悠介の呼びかけに圭太は、霊がいる、そこに、霊がいる、と呟き嘔吐し出した。
結衣の方へ目をやると、彼女もまた倒れ込んでいるではないか。
ーーー一体、何がどうなってるのか。
混乱しかけている頭を冷静にさせる為頭を左右に振ると、グラリ、と視界が揺らいだ。
薄れゆく意識の中、悠介は確かに見た。
廃工場の側に、霊であろう男が悠介達を指差し、不気味な笑みを浮かべているのを。




























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