ふと、気づいた。
影は一度も“攻めて”こない。
俺の動きを再現しているだけだ。
試しに、わざとバランスを崩した。
転ぶふりをする。
影も、同時に転んだ。
心臓が止まりかけた。
影は、俺の動きと一拍もずれない。
完全な同調。
ゆっくりと顔を上げる。
月明かりが差し込んだ。
影の輪郭がはっきりする。
――俺だった。
同じ目。
同じ表情。
同じ制服。
だが、違う。
影の“俺”は、笑っていた。
俺は笑っていない。
次の瞬間、視界が揺れた。
立っているのは一人。
グラウンドの中央。
俺は自分の身体を、少し離れた場所から見ていた。
影だったはずの“俺”が、こちらを見ている。
「君の判断は合理的だ」
それは俺の声だった。
「だから、無駄がない。だが――」
影の俺がボールを蹴る。
「感情の揺らぎも、データとして必要だ」
ボールが俺の身体をすり抜ける。
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