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不思議体験

志那羽岩子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

消された作業員
短編 2026/02/20 14:32 197view

私が「親方」と口にしかけた瞬間、調整員が遮った。

「今、それを何と定義しましたか」

視線は計器に向いたままだった。

「見えるかどうかは問題ではありません。収支が合っていない。それだけです」

その直後、レンチは消えた。

以後、施設の熱管理は理論上の最大効率に達した。圧力は揺れない。温度は誤差ゼロ。報告書は「当初より安定運用」と書き換えられた。

清潔な継ぎ目だけが残った。

先週、管理端末に自動スケジュールが生成された。

《地下搬入口 13:00 資材受取》

依頼主は空欄。削除しても翌日復活する。三日目、担当者欄に私の氏名が追加された。

操作ログを確認したが、登録者は空白だった。

その日の13:00、私は地下へ向かった。

シャッターの向こうに気配がある。姿はない。ただ、重い何かを受け取るための両手の重さだけが先に伝わる。

腰の計測器には、現在のシステムに反映されていないデータが保存されている。記録されなかった熱の流量。数値は小さい。だが消えていない。

メモ欄に一行。

「誤差の範囲」

私は思い出す。

調整員は、あの日の作業報告書に署名していない。
入館ログも翌日には消えていた。

消えたのは親方だけではない。

均衡が取れたあと、清潔になったのは配管だけではなかった。
現場から、余分な痕跡が消えている。

入退館ゲートのモニターが一瞬だけ点滅した。

ID:不明
氏名:親方
状態:作業中

すぐに画面は切り替わった。

だが同時に、別の行が一瞬だけ現れた。

ID:私
状態:未処理

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関連タグ: #地下#心霊
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