私は昔、地方の全寮制高校に通っていました。
その学校には、創立以来ずっと守られている「奇妙な校則」がありました。
『夕焼けが異常な色に染まった日は、18時以降、決して窓の外を見てはいけない。もし見てしまったら、すぐにカーテンを閉めて部屋の隅で目を閉じろ』
地方特有の迷信だろう。
生徒の誰もがそう思っていました。あの日までは。
その日、空は不気味なほど鮮やかな、毒々しいまでの赤紫色に染まっていました。
寮の同室だった親友のサキは、面白半分にカーテンの隙間から外を覗きました。
「……ねえ、誰かいる」
サキの声が、妙に上ずっています。
私もつられて、つい隙間から外を見てしまいました。
校庭の真ん中に、一人の男が立っていました。
ピンク色の夕闇に溶け込みそうな、全身真っ白な服を着た男。
そいつは、こちらを見上げると、
両手を頭の上に掲げ、狂ったように左右に振り始めました。
バッタン、バッタン、と骨が折れるような音が聞こえてきそうな、人間業とは思えない速度。
振るたびに、そいつの腕は際限なく伸びているように見えました。
「おーい、おーい、いいいろだぞー」
窓を閉めているはずなのに、男の声が耳元で直接囁くように響きました。
高低差のない、機械が喋っているような無機質な声。
私たちは悲鳴を上げてカーテンを閉め、朝まで震えて過ごしました。
翌朝、サキがいなくなりました。
昨夜のうちに寮を抜け出した形跡がある、ということでした。
一週間後。
ようやく落ち着きを取り戻し始めた授業中のこと。
突然、校内放送が流れました。
『♪ ピーンポーンパーンポーン』
『1階、下駄箱にノートが届きました。サキさん、至急取りに来てください』
教室が、一瞬で凍りつきました。
その「放送」が何を意味するのか、生徒たちは全員知っていたからです。

























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