早くマスターが帰ってきてほしいと願いながら、俺は再び小説に目を移した。
すると今度は、何か水が流れるような音がした。
音の発生源は…やはりあの奥のテーブル席、女のいる辺りだった。
恐る恐るそっちを見ると…俺はあまりの光景に『ひゃああ?!』と間の抜けた声をあげた。
女が…まるで水飴のようにドロドロに溶けて床に水溜りを作っていた…
だが…溶けていく女の目は…確実に俺を見ていた。
もう耐えきれなくなった俺は、マスターの帰りを待たずに店を出ようと思いドアに駆け出した。
カランカラン…
ドアの鈴が小さく鳴りドアが開いた。
買い物袋を持ったマスターが帰ってきた。
マスターは慌てふためく俺の事を見て首を傾げていた。
俺はマスターに奥のテーブル席を指差して
『お、お、女が!あそこにいて!と、溶けて…』と要点を得ない言葉で必死に状況を説明した。
マスターと一緒にテーブル席を見たが…水溜りどころか、水滴1つついてはいなかった…
ただ、何か香水のような香りだけが微かに残っていた。
『……ミユキちゃん…』
悲しげな顔のマスターがぽつりと呟いた。
それが誰なのかは聞けなかった…
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