その夜、交通事故と交差点名をネットで調べた。
しかし、特に検索結果に何も該当しない。
うすら寒い話だ。『全国ニュースになった』、『去年死んだ』という話はなんだったのか?
私はその後も何回かそこで手を合わせて拝む幾人かに事件のあらましを聞いた。
中年男性、女子高生、小学生男児、老人、OL、親子連れ…小瓶の前で立ち止まり拝む人に聞くと、そこで亡くなった人の話が出るわ出るわ…
一方で、何一つネットではヒットしない。
気味が悪くなり、私はそこの道を使うのを避けたくなった。
ー1年後の春ー
冬が終わり、暖かい日が増え始めてきた頃、会社からの内示が出て、私は東京へ転勤となった。
あらかた引っ越しの用意が終わった頃、残すところ2回となった華道教室の帰り。
私はゴミ収集のことを考えていた。
既にあらかた引っ越しの道具をまとめ、ゴミ出しも済んだ。
しかし、ここで新たに生けた花を捨てる為に新たなゴミ袋を使うと、残りの日数から逆算して少々足りない。
ふと、視線の先に例の小瓶が見えた。
献花と割り切って小瓶に挿してしまえば、片付けが楽になる。
私は小瓶に花を挿して、しゃがみながら拝んだ。そこで亡くなった人達へせめてもの手向けとして。
その時、背中に柔らかい感触を感じた。
人だ。誰かが私の背中を触っている。
振り向きたいのに、私の足は痺れたかのように硬直して動けない。悲鳴をあげようにも、喉から声が出ない。
指は背中をスゥっとなぞる。
薄気味悪い一方で、この感覚はどこかで感じたことがあった。
背中腰に文字を書いて当てるゲームだ。
何者かはわからないが、私の背中に文字を一文字ずつ書いている。
最初は何を書いているか皆目見当もつかなかった。
平仮名?どちらにせよ、何だこの状況は?!
私は慌てふためいた時、ようやくわかった。
背中の文字はしきりに私の名前を書いている。
「み」「の」
次に書く言葉は「り」だ。
「みのり」は私の名前だ。
「り」を書き終えた時、私は硬直解けた。
解けたと同時に振り返ろうした瞬間に背中を突き押された。
交差点に前のめりで倒れる私が最後に見た光景は猛スピードで向かってくるタクシーのヘッドライトだった。


























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