声をかけられた。
Aの声で。
私はゆっくりと目を開けた。
そこには誰の姿もなかった。
いつも通りの狭い和室。
天井には点滅する蛍光灯。
布団の上には動かない自分の足。
ただ一つだけ、見慣れないものがあった。
布団のすぐそば、畳の上。
あの黒い地蔵とまったく同じ形をした小さな置物が、静かに置かれていた。
全身が黒く塗られ、目と口だけが丸くくり抜かれている。
その空洞の中で、何かがゆっくりと蠢いた気がした。
私は叫ぶこともできず、声にならない息を吸い込んだまま固まってしまう。
──ピロン。
不意にスマホの通知音が部屋に鳴り響いた。
視線だけで画面を確認する。
通知の送り主の名前を見て心臓が止まりそうになった。
『A』
もうこの世にはいないはずの名前。
震える指でメッセージを開く。
そこにはたった一文だけが表示されていた。
A《次はさ、どこ行く?》
その文字を見た瞬間、部屋の蛍光灯がバチンと音を立てて消え、
闇の中で、ペタッ、ペタッ、ペタッという音だけが、また近づいてきた。
──私は悟った。
あの夜、魂喰地蔵の前でお願いしたことは、まだ終わっていないのだと。
「幽霊に会えるように」という、たった一度の軽い願いの代償を、
私はこれからも、ずっと払い続けなければならないのだと。
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伏線回収すごい
YouTuberおもろい
オーソドックスな話かもしれないが、表現方法と簡潔な文体でとても読みやすく、映画を観てるような気分になった。