※※※※※※※※※※
それは朝から雪がちらついていた2月のある晩のこと。
私は母と二人テーブルを挟んで、ささやかな合格パーティーをしていた。
すると、
トントン、トントン
庭に通じるサッシ戸を叩く音がする。
私は母と何だろうと目を見合わせ立ち上がりサッシ戸の前に立つと、カーテンの隙間から庭を覗いてみる。
そしてはっと息を飲んだ。
雪が積もり月明かりで白く光る庭の真ん中に、父が立っていた。
あの奇妙な格好で背を向けて。
私はサッシ戸を開けると、
「父さん、そんなとこに立ってないで、こっちにおいでよ。
今母さんと私の合格パーティーしてたのよ」
と言ったが相変わらず父はそのままだ。
あんなところで何してんだろう?と母と二人見ていると、父はゆっくり天に向かって大きく両手を広げる。
すると次の瞬間信じられないことに、背中の黒い羽がパッと両側に開いた。
そしてそのまま小刻みに羽を震わせながら宙に浮いたかと思うと、あっという間に冬の星空の闇に溶け込んでいった
その時私は父が、人間努力すればどんなことでも出来るということを身を持って教えてくれたのだと思った。
いや、そうとでも思わないと、あまりに父が不憫だった。
母はというと、その様をじっと見送りながら、ボソリと呟いた。
「お願いだから、もう帰ってこないでね」
【了】
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 15票

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。