入って左手にある台所に母はいた。
「ちょっと、あんたなにしてんの?
いい加減にしなさいよ」と俯いたまましゃべっている。
「ねえどうしたの?」と言いながら母の肩越しに目線の先を見た途端、ゾクリとした。
床に大人くらいの大きさのゴキブリがいる!
でもよく見ると、それは父だった。
上下黒いジャージに背中にはプラ板を黒塗りして作った二枚の羽を付けていて、
バーコード頭にはご丁寧に二本の触覚が付いている。
母はホウキを持ってくると、
「このバカは、こんなところでなにしてんのよ」と言いながら力任せに何度も叩きだした。
ゴキブリ(父)は腹這いのままシャカシャカと手足を動かしながら台所から出ていった。
※※※※※※※※※※
父の奇妙な行動は、ここから始まった。
それまでは日がな一日ソファーに寝転がっていたのが、それからは神出鬼没、家のあちらこちらに現れるようになった。
台所や洗面所の床、冷蔵庫の前、部屋の片隅など、おおよそゴキブリのいそうな場所に、あの奇妙な格好で現れるようになった。
そして文句を言うと、シャカシャカとどこかに行ってしまう。
食事も一緒にしなくなった。
どうやら深夜に冷蔵庫を開けて、野菜やら肉やらをそのまま食しているようだ。
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いつリンゴを投げつけるのかハラハラしました
カフカ?
コメントありがとうございます
─ねこじろう
フランツ・カフカの「変身」を思い出した、面白いです
なるほど、カフカですか。
なかなかの着眼ですね
─ねこじろう
朝、目が覚めると自分が巨大な虫になっていた。
どうやって父はゴキブリになるんだろう
友達のお父さんもゴキブリになって消えたのかな????
親が子供を産んですぐに消えたのはゴキブリになったからかな??
皆様、様々なコメントありがとうございます
─ねこじろう
感動しました
不思議な話でした!!
凄かったっっ。