あれは、確か大学2年の時の夏休み。
5歳年上の兄から珍しく電話がきて、話を聞いてみれば何とも脱力する内容。
「彼女と肝試しデートの直前で別れた…。でも肝試しはしたいから、お前着いてこいよ」
何でデートで肝試し?
その状態でまだ肝試ししたいの?
ってか何で私なのさ?
疑問は幾らでも浮かんだけど、元々兄妹揃ってオカルト好き。
肝試しには興味あったし、何より行き先はそこそこ有名な心霊トンネル。
少し悩んだが、結局一緒に行く事にした。
肝試し当日、兄の車で家を出たのが夜9時前後。
大体1時間くらいで目的地に到着。
そこは、山を突っ切るような形で作られたトンネルで、雰囲気は抜群。
車を降りてすぐに身震いしたくらい。
車から降りて、懐中電灯のみで照らされた入り口は、内部に灯りがあるにもかかわらず、薄暗い。
車を降りてからずっと軽口を叩いていた兄も、あと一歩踏み出せばトンネルって所で足を止めて、無言になった。
思わず顔を見合わせて、意を決してトンネル内部へ歩き出す。
中はやっぱり薄暗くて、ジメジメしているのに、妙に涼しい。
歩くたびに音が反響して、まるで誰かが後ろからついてきているみたいだったけれど、振り返ろうとは思わなかった。
“誰か”が本当に居たら、怖いから。
決して長くないトンネルだから出口が見えていたけど、なんだか嫌な想像ばかりが膨らんでいく。
人がいたらどうしよう。
花なんか供えてあったらどうしよう。
ただ、立ち止まるわけにもいかず、ついに出口に辿り着いて…出た瞬間、張り詰めていた空気が、ふっと軽くなった。
「怖かったね」
「雰囲気あったな」
「やっぱ不気味だわー」
兄と話しながら、トンネルを振り返る。
これを今から戻るのかぁ、とゲンナリしたけど仕方ない。
「お、ちょっとだけ街の明かりが見える。意外と綺麗だぞ」
近くのガードレールに手を付いて、下を見ながら兄が言うので、隣に並んだ






















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