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不思議体験

どこかで見た話さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

終の夜
短編 2025/11/17 19:27 1,240view

 「百話目は、語らなくていいんだよ」

 そう言って、最後のろうそくに手をかざす。

 「百話目は……記憶の話なんだ。消された話、語られなかった体験。ここに来たはずなのに、もういない誰か。話してないのに、知っている風景。それが積もり積もって、形になる。語らなかったぶん、何かが現れるんだ」

 俺は無意識に部屋を見渡した。
 七人いたはずが、誰かが抜けている。
 いや、八人だったか?
 俺の左隣にいたあの女の人は? 確かにさっき、笑っていた声がした。笑ったのは誰だった?

 石田がろうそくを吹き消すと、すべての火が消えた。

 闇だけが残った。
 あまりにも自然で、ぬるい闇だった。

 そして、ふと気づくと――部屋の奥に、何かが立っていた。
 顔の輪郭だけが浮かんでいる。
 目も鼻も、口もない。けれど、誰よりもはっきりとこちらを見ていた。

 声がした。誰でもない声が、俺の中に響いた。

 「お前が百話目だ」

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