なのに、まだ死ねないんです。
霞んだ視界の中で、女が立ち上がるのが見えました。
彼女はトドメを刺すでも逃げるでもなく、
シャワーを手に取って、血まみれの床を流し始めたんです。
鼻歌なんか歌いながら。
壁を流し終えたあと、今度は私のほうにシャワーを向けました。
冷たい水が、何度も、何度も。
痛いとか、苦しいとかじゃなくて、
ただ寒くて、惨めで。
汚いものみたいに扱われてるのが、いちばんつらかった。
女は、それを見て楽しそうに笑ってました。
そして、私はそこで意識が遠のいて――
夢から覚めました。
起きたとき、心臓がバクバクしてて、汗びっしょりで。
しばらく呆然としてたんですけど、
はっと思い出したんですよね。アプリのこと。
「これ、録れてるかも」って。
アプリを開くと、ちゃんと録音されてました。
最初は寝返りの音。いつも通り。
「なんだ、つまんないな」って思った瞬間――
自分の寝言が聞こえたんです。
お、きたきた。
「やめて!」とか「殺さないで!」とか言ってたらどうしよう。
怖いけど、ちょっとワクワクしながら耳を澄ませました。
録音の中の私は、こう言ってました。
この話は怖かったですか?
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