あの溺れる男性も、私の姿に気付いたのだろう。
助けを求める姿に勇気付けられた私は、決意を新たに、波を掻き分ける腕に力を入れる。
…
…この時の勇気を、私は忘れない。
…忘れることなんて、できる筈がない。
…
声が聞こえた。
『嫌だ…
『帰りたい…
『冷たい…
『一人は嫌だ…
『あの時…見えたんだ…
『小さな足に絡まったアレを…
『このまま流されるのは嫌…だ…
『帰りたい帰りたい…
『食われたくない…
『なんで、こんな…
『助けなきゃ、よかった…
『痛い…
『寒い…
『冷たい…
『帰りたい…
海を掻く私に男の声が聞こえた。
それは助けを求める声だった。
待って!
行かないで!
私が、あなたを助けるから!
心の中で私は叫ぶ。
その時。
不思議なことが起こった。
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