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kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

分からない何か 「鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱」
長編 2025/09/25 09:03 7,418view
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老婆は編み棒を止め、じろりとこちらを見上げる。

「……あんた、それをよその者に教えるつもりかい?」

中年の男は少しばつが悪そうに肩をすくめる。

「別に悪いことを調べてるんじゃねぇさ。ただ、こいつが探してるんだ」

老婆は視線をこちらへ移し、鋭く観察するような目を向ける。
まるで「信用できる人間かどうか」を見極めているかのようだ。やがて老婆はしぶしぶ立ち上がり、紙とペンを手に取った。

「……仕方ない。だが、あんた、どうなっても知らないからな」

俺は少し身を強ばらせながら頷く。
老婆の視線が鋭く、背筋にぞくりと寒気が走る。

中年の男は紙とペンを受け取ると、手早く文字を書き始めた。その動作は慣れているかのようで、迷いもためらいもない。俺は息を飲みながら、中年の男が書き終えるのをじっと見守った。

やがて男が筆を置く。
その紙には「鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱」

思わず息を呑む。意味も読み方も、全く想像がつかない文字列だった。

俺は恐る恐る中年の男に尋ねる。

「……これ、なんと読むのでしょうか?」

男は肩をすくめ、少し困ったように頭をかく。

「読めないよ。そもそも、どう読むのか誰も分からない」

大学生の俺はさらに踏み込んで尋ねた。

「読めないって……そもそも、この名前は何なんですか?」

すると、編み物をしていた老婆が口を開いた。その老婆の声には、どこか慎重さと、警告めいた響きが混ざっていた。

「これは、この村に古くから伝わるものだ。神なのか、それとも妖か、正体は誰にも分からん」

すると老婆はゆっくりと口を開き、昔話を始めた。

「昔々、この村に何かがやってきた。

何かは、村の者たちに自分は何者かと問いかけてきた。

村の者たちはそれに答える事ができなかった。

神なのか、妖なのか、それともただの化け物なのか誰にも分からなかった。

その何かは勝手に村に住み着いた。

追い出そうとする者もおったが、ある者たちは『もし神なら、追い出せば祟りがあるかもしれぬ』と。

だから、手を出せず、村に置いておくことにした。しかしそれ以外の村人は恐れ、化け物として追い出そうとした……」

そうしているうちに、村人の間で意見が割れた。「これは神じゃ!」と信じる者と、
「いや、化け物に違いない、追い出せ!」と恐れる者。

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