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ヒトコワ

大鷹恵さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

仕事帰りの俺が路線バスで体験した怖い話
短編 2025/09/15 16:29 1,567view

仕事を終えた俺は職場近くにあるバス停にて煙草を取り出し、ライターに火をつける。雨がぽつりぽつりと降って、辺りは暗くなっていた。俺はスマホでジャニス・ジョプリンの遺作のアルバム「パール」を聞く。その時、バス停にセーラー服を着た女子高生がやって来た。どうやら、この女子高生もバスに乗るつもりらしい。女子高生は
「お兄さん。ジャニス・ジョプリンが好きなんですか?」
と質問してくる。
「まぁ昔の音楽が好きでね」
「へぇそうなんですか。実はジャニス・ジョプリンを聞くのは私くらいなんですよ。クラスの女子や男子たちはジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックス、ザ・バンド、ジェファーソン・エアプレインといったロックバンドに興味がないし」
「ジェファーソン・エアプレイン?ああ、スターシップの事だな?スターシップなら「We Built This City」や「Sara」「Nothing’s Gonna Stop Us Now」はいつまでも名曲だよな」
「スターシップって何?とかく、洋楽の方がハードロックにプログレッシブロック、サイケデリックと今のご時世、最先端を行っているんですよ。それに比べて、日本の邦楽は洋楽に比べるとかなり遅れているわ」

女子高生は洋楽の良さをまくしたてる。そんな時、俺がいつも乗る路線バスがやってきた。俺と女子高生はバスに乗り込んだ。バスの中には運転手、ブルーカラー風の男、老婆の三名がいた。バスはそのまま、発進した。
「日本でもウッドストック・フェスティバルみたいなことをやればいいのに。日本ではこんなことができないのかしら」
女子高生はぴーちくぱーちく、洋楽の話を始める。そんな時、バスは次のバス停に停車した。そこに三人組の男が入ってきた。三人組の男はわいわい騒いでいた。バスは発進する。ブルーカラー風の男は俺たちや三人組の男たちの方を睨みつけていた。ブルーカラー風の男はイヤホンでラジオを聴いている。俺は後ろの三人組の男たちの方を見た。二人はわいわい騒いでいるが、一人だけ寝ているような感じであった。俺は大人しくスマホでジャニス・ジョプリンの曲を聞いていた。ブルーカラー風の男は俺たちや三人組の男たちの方を見て、顔面蒼白になる。男は停車ボタンを押す。バスはバス停に停車した。ブルーカラー風の男は俺の手を引っ張り
「兄ちゃん、バスから降りようや。文句なんか言わず、さぁさぁ」
とブルーカラー風の男は俺をバスから引きずり降ろす。言うまでもないが、バス停で知り合ったジャニス・ジョプリン好きの女子高生はバスに乗ったままである。俺とブルーカラー風の男がバスから降りると、バスは一目散に走り去っていった。

「おい、あんた」
バスから降りた俺はブルーカラー風の男に声をかけた。ブルーカラー風の男は肩をガタガタ震わせる。先ほどまでの威勢のよさは無かった。

「兄ちゃん、バスに乗ってきた三人組の男がおるやろ?真ん中の男、あれはどーみても死体やで、死体はカモフラージュとして使われたんだ。ラジオのニュースで男女三人組の殺人鬼グループが逃走中なんよ。ラジオで殺人鬼グループの容姿が分かったんや。あの二人は女とどこかのバス停で落ち合うつもりなんだろう・・・」
「じゃあ、あんたは俺の命の恩人というわけか?後、バスに女子高生も乗っていたんだが・・・。俺と同じバス停からの乗車したはずだ」
「お兄さん、一人しか乗ってこなかった。バスの中には女子高生なんていなかった」
「そんなはずはない。彼女はジャニス・ジョプリンが好きだと言っていた」
俺の発言を聞いて、ブルーカラー風の男は顔面蒼白になる。
「おっさん、何か知っているのか?」
「ああ、あのバス停にジャニス・ジョプリンのファンの幽霊が現れるという噂がある。たしか、お兄さんはジャニス・ジョプリンの曲を聴いていたな?あのバス停でジャニス・ジョプリンの曲を聴くと女子高生の幽霊が現れるんだ。お兄さんは幽霊に遭遇したというワケだ」
「ジェファーソン・エアプレインは知っていても、スターシップを知らなかったのはそう言うことだったのか・・・。それならば、辻褄が合う」
俺のスマホからジャニス・ジョプリンの「ジャニスの祈り」が流れる。

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コメント(1)
  • わかりにくい

    2025/09/18/01:03

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