私は込み上げる恐怖に耐えながら手探りで壁を伝った。
手を伸ばした先に何かが当たりパリンと床で割れるがそんな事は気にしていられなかった。
硝子を踏まない様に足を這わせてつま先で破片を避けながら進む。
ドアの枠の様なものを掴み、寝室の外まで出れた事がわかる。あとは廊下を進みL字に右に曲がりさえすれば玄関だ。
目を瞑り壁を触りながら進む私の背後ではずっとあの男の声が何かを呟いている。
それは私の後ろをついて来ていた。
早く…早く…追いつかれる前にここを出なければ。
恐怖で不規則に口から吐き出される呼吸の音が廊下に響く。
突き当たりの壁に手が届いた。
これであとは右に曲がりさえすれば玄関—–
壁に沿う様に右に滑らせた私の手は
そのまま壁にぶつかった。
「え…?」
思わず声が漏れる。
本来ならここから右に伸びている玄関への道は固い鉄筋の壁で塞がれていた。
道を間違えた…?この狭い家の中で?一体どこから?ならば今私はどこにいるというのか。
一気にパニックになり息が乱れる。
ここから出して…!
その瞬間、
トントン
背後から肩を叩かれた。
思わずその場に硬直する。
目を瞑って固まったままの私の耳元に何かが近づく気配を感じた。
『——–夜分遅くに失礼いたします。
私ヨシナガと申します。』
先ほど消したはずの留守番電話の音が耳元で再生される。
唯一違う点は入っていた砂嵐が消えていた点だった。女はヨシナガと名乗った。
『選んでしまって大変申し訳ございません。
これはテストではありません。
——-寝返りを打たないでください。























暗闇の中で更に目を開けられない状況って、それだけで普通は耐えられないくらい恐ろしい。
最後はどういう意味なんだろう?
めちゃくちゃ寝癖付いてたんかな。