俺は声を失った。
相変わらず仲間たちは笑いながらおどけて歩く。
するとにわかにその声に怒りを覚えた。急速に膨れ上がった不快感が俺の口を開いた。
「ちょっとうるさい!静かに!」
自分でも驚くほどの怒鳴り声に、仲間たちはビビって「お、おいおい、なんだよ急に・・」的な反応。それも当然。言った自分が一番驚いている。しかし止まらなかった。
「騒ぐ声がうるさいんだよ。霊を怒らせるから静かに歩けよ!」
俺の豹変ぶりに、5人の中で特にビビりだった二人が「うわ、なんかヤバくね?」って具合でさっさと先に行ってしまい、残ったのは俺を含め3人。
残った2人は俺を心配しながらトンネルの出口まで付き添って歩いてくれた。その間も俺は足もとの幼女の姿がくっきりと「見えて」いて、死ぬほど恐ろしかった。
やがてトンネルが終わり、ようやく幼女の幻影?からも解放されたが、そこでまた俺を異変が襲った。
今度は突然、懐中電灯の明かりがとてつもなく不快になったのだ。
「ちょっと懐中電灯消してくれない?」
「は?」
「眩しくて気持ち悪いんだよ。早く消して」
「いやいやいや、真っ暗じゃん」
「いいから早く消せって!!」
俺の剣幕に二人のうちの一人がいよいよ恐れをなし、「お、俺も先行ってっからよ」と逃亡。ついに俺ともう一人の二人だけが暗い廃屋とトンネルの前に残された。
残った友人Hは素直に懐中電灯を消してくれた。一瞬で俺たちは完全な暗闇の中に埋没した。
その途端、とほうもない解放感が俺を包んだ。ものすごく気分が楽になり、浮遊感に包まれたのだ。
俺、やばいかも・・・。
意識ではそう感じていても、とにかく暗闇が心地よく、体が勝手にトンネルのほうを向いていた。姿は見えないけれど、トンネルの中から何かが手招きしていた。そしてそこに行かねばならないという義務感が体の中で湧き起こった。
「Hももう帰ってていいよ。俺、もう一回トンネルの中入ってくるから」
真っ暗闇の中、俺は勝手にそんなことを言っていた。
意識はハッキリしていた。自分が意味不明なことを口走っていることも分かっていた。
でも止まらない。自分の意識とは裏腹に、足はトンネルに向かって歩き出した。

























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