そのうち、「あれは本当に見間違いだったのか?」と、自分でも分からなくなってきました。
車でぶつかった衝撃は確かにあった。
でも残っていたのはただの砂。
決定的だったのは、ある朝のことです。
出勤しようと車に乗り込んで、キーを回しても何も反応せず、エンジンがかからない。
バッテリー上がりかな、なんて軽く思ったんですが、なんだか嫌な予感がしたんです。
出勤前だったことの焦りもあり一応調べなければと、ボンネットを開けると、中に砂がびっしり詰まっていました。
部品の隙間という隙間に、押し込められるようにして、溢れそうなほどの砂が。
子供のいたずらか、誰かの嫌がらせか……。
そう思い込むしかありませんでした。
その車は古かったこともあって、結局そのまま廃車にしました。
そして不思議なことに、車を手放してからは、あれほど気になっていた“砂”の違和感がぴたりと消えたんです。
あとで聞いた話なんですが。
持っていってくれた業者の方が、
「エンジンの奥まで砂が詰まっていて、とても修理できるような状態じゃなかった」
そんなことを言っていたんです。
機関部にまで大量に砂が入り込むなんて、本来ありえないことだそうです。
まるで呼吸をする場所にまで砂が詰め込まれたみたいに。
今も思うんです。
もし、あの夜、目をつけられたのが車ではなく、わたし自身だったらどうなっていたんだろうって。
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