「あ」
あの子たちだ。
見ると、例の黄色いテープの張ってあった部屋の窓から、彼女らのうちの一人が顔を出してこちらに手を振っているようでした。
(入らない方がいいよって言っておいたのにな)
私は苦笑しながら手を上げてそれに応え、その廃墟を後にするために歩き出しました。
その瞬間、背中を悪寒が駆け抜け、鳥肌が音を立てるように全身を覆いました。
廃墟の窓から手を振っていた女の子は、黒い髪の毛にグレーっぽい色の服を着ていました。
私がさきほど話していた女の子たちは、どちらも茶髪で、赤い服と白い服を着ていたのです。
咄嗟に廃墟を振り返りました。
あの窓には、もう誰の姿もありませんでした。
恐ろしくなった私は足早にその場を立ち去りました。
男気を見せて彼女たちの安否を確かめようかと一瞬思いましたが、そんな気概も恐怖にたやすく飲み込まれてしまいました。
確かその翌年、その廃墟は解体されてしまったと記憶しています。
私が見た窓から手を振っていた女の子は、果たして何者だったのでしょうか。
あまり克明には思い出したくない体験です・・。
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