これ、見てみろ

いやさ、最初に言っとくけど、別に怖がらせるつもりはないんだよ。
ただ、これを俺一人で抱えてると、ちょっとキツくてさ。
だから、まあ、聞いてくれると助かる。

きっかけは、二週間くらい前かな。夜中に友達から急にLINEが来て、「これ、見てみろ」って。
画像が一枚送られてきた。白っぽい紙に黒い字がびっしり。
変な崩れた字体で、所々に滲みがあって読みにくい。
でも、なぜか最初の一行だけはやたらくっきりしてた。

──よく見て。

何のことやら、だろ？
俺もそう思ったんだけど、そのままスクロールすると文章が続いてる。
読まないつもりだったのに、気づいたら目が追ってた。

で、最後の行まで行ったところで、スマホがフリーズしたんだよ。
画面は真っ黒。でも、文字だけは残っててさ。
──これでお前も見たな。
って。

さすがにビビった。
でもまあ、ネットの怪談みたいな悪ふざけだろって、その時は笑って終わらせたんだ。
ところがさ、翌日、外歩いてたらふと視線を感じて振り返った。
ビルのガラスに映った自分の肩のとこ、何か黒い影みたいなのが寄りかかってた。
でも、振り返っても誰もいない。
ガラス越しにだけ映ってる。

それからだよ。

家の中でも、鏡とか画面の端に黒いのが立ってる気がする。
最初はぼんやりだったのが、日に日に輪郭がはっきりしてきてる。
いや、これがさ、どうも俺の後ろじゃなくて──お前の方を向いてる。

ああ、笑うだろ。でもな、俺はこの“やり方”を調べたんだ。
こういうのは、見たやつから次のやつに渡していくもんらしい。
で、渡されたやつは、見てしまった時点で…まあ、逃げられない。

だからさ、ここまで読んだなら、ちゃんと最後まで“見て”くれ。
中途半端は一番よくないらしいから。
ほら、この行を読む時は、まばたきしないで。
…そうそう。動かないで。
後ろに立ってるやつが、ちゃんと見えるように。