まず初めに、知っていて欲しいことがあります。
この話は、俺の地元で起こった、浜田家失踪事件に関するものになっています。
こちらの都合により、地名、年代は伏せますし、登場する人物の名前は、浜田家を含めて全て仮名です。
事件の詳しい詳細も出てきますが、所々で改変、付け足しを入れています。ご了承ください。
浜田家失踪事件は、俺たちが勝手に名付けた事件で、当時警察にも届け出ましたが、事件性無しと判断されて、捜査される事はありませんでした。
俺がまだ中学生の頃その事件は起きました。
俺の近所に住んでた、浜田さん一家が、突然居なくなったんです。
浜田さん家は、お父さんの剛さん、お母さんの真理さん、当時まだ小学生だった、涼介くんの3人家族。
剛さんはバリバリ仕事が出来るサラリーマンで、地域のゴミ拾い、掃除当番まで、何でも率先してこなしてくれる、とても頼りがいのある大人という印象を、子供ながらに持っていました。
真理さんは、優しくて面倒見が良くて、近所の子供達に、手作りの洋菓子を配ったり、ジュースをご馳走したりしてくれて、とても笑顔が素敵な、いいお母さんでした。
涼介くんは明るくて活発で、運動も勉強も出来る、いわば誰からも好かれて愛される、可愛い男の子でした。年は少し離れているけど、僕もよく遊んであげました。
そんな3人が、何も言わず、突如として姿を消したのです。
仕事も、家も、学校も、
全て、投げ捨てて。
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高校を出て、東京の大学に進学した俺は、この事件のこと、正直忘れていた。
事の発端は、去年の夏。
上京して初めて迎えた夏休みに、実家に帰省した。
そこで、旧友の猿田に、しつこく呑みに誘われたのが始まりだった。
「おい〜。犬井〜、呑み行こうぜ!親友だろ?俺ら。」
「親友になった覚えは無いな。悪いけど、実家でゆっくりしたい気分なんだ。また今度にしてくれ」
「そりゃねえって。東京住みの都会派は田舎っぺとは付き合わねぇよ。ってか?!何も連絡よこさず帰ってきて、随分偉そうだなぁ!東京の奴は!」
こうなることは目に見えていたから、俺は帰省することを親にも言わずに帰ってきた。一体どこから俺が帰ってくることを嗅ぎつけたんだ。こいつは…… クソ、面倒だな。
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気がつくと、近所の古びた居酒屋で猿田と乾杯をしていた。
猿田の”東京コンプレックス”に触れてしまった俺は、呑みに来ることしか、猿田の怒りを沈める方法を知らなかったからだ。

























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