「なー、マジでここ? ガチでヤバいって聞いたんだけど」
夜11時。
潰れた精神科病院の前で、カズがヘルメットを脱ぎながら言った。
「ビビってんの?」
そうからかうのはミホ。セミロングの金髪にピアスが光る。
三人目のリュウは黙ったまま、ポケットからタバコを取り出した。
火を点ける手が、微かに震えていたのを、カズは気づかなかった。
「……返してください」
最初にその声を聞いたのは、病院に入って10分ほどしてからだった。
地下の診察室跡に落書きをしていた時、背後で女の声がした。
けれど振り返っても、誰もいない。
「なんか今、聞こえた……?」
「気のせいでしょ。風だよ」
ミホはそう言って笑ったが、リュウだけがひどく青ざめていた。
帰りのコンビニで、リュウは一言も喋らなかった。
あれ以来、何かに怯えるようにして、いつも背後を気にするようになった。
3日後、ミホが言った。
「リュウ、最近マジでヤバくね?」
「ずっと部屋の隅見てんの、マジでやべーって」
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