ある夜、帰宅すると洗面所に歯磨き粉の泡が残っていた。
私は出勤前に流したはずだ。
気のせいかと思ったが、翌朝また同じように泡があった。
しかも、2つ分。
自分の分と、誰かの分。
誰か来たのか? あり得ない。合鍵は私しか持っていない。
気味が悪くなり、翌晩は泡が出ないようタオルをかぶせておいた。
翌朝、タオルは床に落ちていた。泡は──やはり2つ分。
私は独り暮らしだ。ずっと、そうだったはずなのに。
突然、見知らぬ人が話しかけてくる、人の家に勝手に上がり込んでいる。
なんて失礼な人なんだろう。
歳は30後半か、しかし泥棒には見えない。
追い返そうとして怒鳴ったら、なき出した。
なんだこいつは。
さて、今日も、しごとに行かないと。
あ、いや違う。
仕事は定年になったんだっけ。
今泣いている、おんなは、私の娘なのか?
息子がいたはずだが。
つま、は5年前にしんだ。
妻が死んだのは10年前だ。
わたしは、今どこにいるんだ?
私は、仕事に、行くんだ。
これから、会議だ。急がないと。
部下の資料も見ないと。
部下?
<<了>>
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