『記録番号N-041:ノドノヒト』
【医療記録抜粋】
患者名:不明(仮名:N)
収容日:20XX年4月1日
診断:重度解離性障害/自己像崩壊/幻聴幻視/自傷傾向
初診時、明確な自己名が答えられず。
質問に対し「俺じゃない」「中の人が喋ってる」と繰り返す。
「のどの裏に誰かいる」と主張。
常に笑顔を浮かべているが、感情に一致せず。
鏡に過敏に反応する傾向あり、「あれが本物」と指差すも、対象なし。
【看護師メモ・夜勤 4月3日】
深夜2時半、廊下で独り言を言いながら立ち尽くす姿を確認。
聞き取れたのは「のどがひらいた」「うしろに戻れた」など。
部屋に戻るよう声をかけたが、こちらを見ずに、にやにやと笑っていた。
翌朝、彼の枕元にびしょ濡れの紙が落ちていた。文字が一部だけ読める:
「ノドハ眼、キミモ見られてる」
【監視映像報告:記録時間 4月4日 03:13】
映像:患者Nの病室。定点カメラにて記録。
異常①:Nは就寝状態だったが、画面奥の鏡にだけ別の動きが映る。
異常②:3:13:06、Nが寝たまま口を開ける。喉の奥から白い“指”のようなものが覗く。
異常③:3:13:19、Nが突然上半身を起こし、カメラの方向を凝視。
カメラの映像、以降ブレとノイズ。復旧後、Nは再び就寝状態。
【医師記録 4月5日】
今日の面談中、患者Nが急に笑いながらこう言った:
「先生、先生も映ったよ。
のどの中にいた、あの顔とおんなじだった」
























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