「あの学校の裏山ですね」
Kさんが指し示す。
「中腹あたりに埋めたんですよ。行ってみますか?」
首肯しかねた。
「……ですよね。僕も、もう行きたくありません」
「気味が悪いですから」
現地に赴いたのは、Kさんからこんな話を聞いた後だった。
「10年前に埋めた、タイムカプセルみたいなものでした」
都内の某大学に通うKさんは今年成人している。
その彼の10歳時、小学4年生当時に埋めた物だと言う。
「僕とAくん、TくんとSちゃんの四人でした」
8月の茹だるような炎天下、放課後に裏山へ集合した。
「ゲームのカートリッジ、レアカード、人形、シール、落書きしたノート、セミの抜け殻……」
「それぞれに好きな物を持ち寄って、金属缶に入れて埋めたんです」
「10年後に掘り出そうと約束して」
四人の進路は分かれていったが、連絡は取り合っていた。
成人式のタイミングで、一度集まろうという話になったそうだ。
地元の居酒屋で解禁になった酒を飲みまくった後、赤ら顔のAくんが切り出した。
「今からアレ、掘り出しにいかねー?」
反対するものはいなかった。
「僕、飲めないんで、素面だったんですよ」
「酔っ払い三人連れて、運転役を買って出ました」
こういう流れになるだろうと予期していた為、Kさんの車にはスコップを積んで来ていた。
「なんだかんだ楽しみだったんですね、僕も」
騒々しい三人の面倒を見ながら、目的地にたどり着いた。
「危なっかしいから、僕が掘ることにしました」
掘り始めて間もなく、カンと音がした。
深く埋めた記憶があったが、そこは所詮小学生の力の範疇ということだろう。
果たして、宝物はそこにあった。
おおー、などと四人で歓声をあげて喜んだ。
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